古代インドで発生したチャトランガは、西方にはペルシアのシャトランジ、ヨーロッパのチェス、エチオピアのセヌテレジに、また東方にはタイのマークルック、ミャンマーのシットゥイン、日本の将棋、韓国のチャンギ、中国のシャンチー、モンゴルのシャタルに発展していきました。
ここではタイのマークルックを紹介したいと思います。Androidスマホで遊べるアプリも作っていますので、興味があれば遊んでみて下さい。
マークルック(Makruk)
タイ王国にはマークルックと呼ばれる現在の将棋・チェスに類似したゲームがあります。日本の将棋より古いゲームと考えられますが、現在でも約200万人の競技人口がいると言われており、タイでは競技大会も開かれています。隣国のカンボジアでは同じゲームがオク・チャトランと呼ばれています。
チェスと同じく8×8マスの盤面で、クイーン、ビショップの動きをするコマはなく、将棋の銀と同じ動きのコマがあります。獲ったコマの再利用はありません。なんとなく、将棋とチェスの間の子のような印象のゲームですね。
特徴はエンドゲームで、負けている側の残りコマが特定の組み合わせになると、カウントダウンが始まり、規定の手数以内に王を詰められないと引き分けになります。圧倒的に有利な展開になっていても、不利な側が引き分けに持ち込めるというのはチェスや将棋にない面白いポイントだと思います。
盤面とコマ
盤面はチェスと同様に8×8マスです。コマの初期配置は下記の通りで、将棋のように大駒と小駒の間が一列空いています。

コマはクン(王:khun)、メット(種:met)、コーン(根:khon)、マー(馬:ma)、ルーア(船:ruea)、ビア(貝:bia)、ビアガーイ(成ったビア:bia-ngai)の7種類です。チェスと同様に、取った相手のコマは盤面に戻りません。
コマの種類 | 動き方 | 説明 |
クン(王:khun) | ![]() | 周囲8方に1マスだけ動けます。チェスのキング、将棋の王と同じ動きです。自分のクンが詰まされると負けになります。 |
メット(種:met) | ![]() | 斜め4方向に1マスだけ動けます。 |
コーン(根:khon) | ![]() | 前方3マスと、斜め後方2マスに動けます。将棋の銀と同じ動きです。 |
マー(馬:ma) | ![]() | チェスのナイトと同じ動きです。ナイト同様に、途中に他のコマがあっても飛び越えることができます。 |
ルーア(船:ruea) | ![]() | チェスのルーク、将棋の飛車と同じ動きです。ルーク、飛車と同様に、途中に他のコマがある場合、飛び越えることはできません。 |
ビア(貝:bia) | ![]() | チェスのポーンとほぼ同じ動きです。1マス前が空いていれば進むことができ、斜め前に相手のコマがあれば取ることができます。敵陣3段目まで入るとビアガーイに成ります。 |
ビアガーイ(成ったビア:bia-ngai) | ![]() | 斜め4方向に1マスだけ動けます。メットと同じ動きです。実物ではビアのコマをひっくり返します。 |
コマのモチーフはよく分からないですね。元々のチャトランガのコマの種類を一部に残しつつ、実際の遊戯で使ったモノ(貝や種)がコマの名称になったのでしょうか。
勝敗のつけ方
将棋やチェスと同様に、相手のクンを詰ますことがゲームの目的となります。ステイルメイトは引き分けとなります。また、相手がクンのみとなり(裸玉の状態)、自分にビアが無い状態になると、カウントダウンが始まり、規定の手数以内に詰めきれなければ引き分けとなります。
カウントダウンの手数は下記の通りです。
- ルーアが2つある場合、8ー(盤面上のコマ数)。
- ルーアが1つある場合、8ー(盤面上のコマ数)。
- コーンが2つある場合、22ー(盤面上のコマ数)。
- マーが2つある場合、32ー(盤面上のコマ数)。
- コーンが1つある場合、44ー(盤面上のコマ数)。
- 上記以外の場合、64ー(盤面上のコマ数)。
裸玉にされても、戦力差が大きい場合は少ない手数で逃げ切れる(引き分けに持ち込める)可能性があります。
ゲームのおもしろさ
劣勢な側もカウントダウンをうまく使えば引き分けに持ち込めることが、マークルックの面白いポイントです。チェスに比べると大駒の効きが弱く、詰めるにはコーンを上手く使う必要がありそうです。タイでは現在でもメジャーで、競技人口も多く大会もあるので、覚えてみるのも良いかもしれません。
最後に、マークルックをAndroidスマホで遊べるアプリを作ってありますので、よかったらダウンロードして遊んでみてくださいね。
マークルック
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